目的で探す

有田の時間

令和4年度企画展 『 十三代今右衛門展 』 自らの言葉とともに

2022年10月31日

有田観光協会 at 15:01  | Comments(0)





[色絵薄墨草花文蓋付瓶]2001(平成13年)



 

 現在、今右衛門古陶磁美術館では、昨年に引き続き、「十三代今右衛門展」が開催されています。今年は、予定されてます全三期の内の二期目で、昭和50年の十三代今右衛門襲名から最晩年までの四半世紀にわたる、円熟期の作品を中心に展示されています。
 
 今から二十数年前、十三代の最晩年期の作品類を観ましたとき、その草花文にしても、赤を中心にした文様にしても、既に現世を突き抜けた十三代独特の不思議な世界に捉われたのを思い出します。今回の企画展で、この色絵薄墨草花文蓋付瓶等をあらためて拝見しましても、やはり同じ印象を受けました。吹墨から薄墨、そしてそれらの吹重ねと発展成長された極みにこれらの作品があったのだとあらためて感じました。

 昨年一期目の展示では、十三代襲名前の草創期を中心に、伝統と自己表現の狭間で苦悩した若き日々の作品が展示されておりました。
 当時焱の博覧会であった講演を拝聴した折も、若き頃、福岡と有田を行き来する中にありながらも、古陶磁発掘等で感じた初期伊万里のラフなスタイルに心がホッとし、特に吹墨技法を鍋島の伝統の中に取り入れるという画期的な作品制作に到達されました。その後、人間国宝、そして晩年までとどまることなく成長され続けた氏の作陶姿勢を残された氏の言葉と共に感じられる、とても良い展覧会となっているように思います。

 十三代の深い吹墨や枯淡な薄墨の文様には、じっと眺めていると不思議と引き込まれ心が安らぐ瞬間があるようで個人的にも魅力を感じます。そんなことを思っていたとき、ふと十三代の次のような言葉に出会いました。

 ”作品というものは、その作品を見る人、持つ人が、その作品の中に美を見出し心がなぐさめられてはじめて、その作品は生きてくるのではないか” ”私の作品を見て心がなぐさめられると云われるとき、私は最高の気持ちです”

 本年の「十三代今右衛門展」は、12月18日(日)まで開催されています。当代十四代とはまた違った美の世界との出会いに、足をお運びになりませんか。


 










                                        (山)