梅雨空の有田
梅雨入りしたもののまとまった雨が降ってなかった有田も、近づく台風の影響でしょうか、昨日来雨が降り続いています。
そしてまた、ここ焼物の里有田は、さきにご逝去された第14代酒井田柿右衛門さんを悼むかのように、雨のしずくが時折り強くなって落ちて来ています。
私も昨日、観光協会所属のガイドの一員として何名かのガイドと共に告別式に参列させて頂きました。記事等によりますと、全国から3000名弱の方々が参列され、一時ここ有田駅も多くの参列の方で大層混んだようです。
それにしても、有田を代表する名家の当主のご逝去は、有田の方のみならず全国或いは世界の方々の哀しみをさそっているように思います。
何年か前でしたか、14代が聞書きで著された『余白の美』という本を読んだ時、何て気どらない気さくな方だろうと大層驚いたことがありました。その中ではご本人さん自身のご苦労、そして職人さんたち窯で働く人たちの生活を守っていくことのご苦労が気兼ねなくフランクに語られ、窯を守っていくことの大変さの一端が窺い知れて、当主のお人柄がよく分かったように感じていました。
たまたま昨秋でしたか、柿右衛門さんの展覧会が有田陶磁の里プラザ(有田焼卸団地)で開催されたとき、縁あって受付をさせて頂いたことがありましたが、その日当主が様子をご覧にお見えになったことがありました。
会場の方とひととおりお話をされました後、受付からお帰りの際会釈をしましたところ、突然話しかけて見えられ、「有田も皆んなが一つになって頑張っていかんといかんねぇ~、ご苦労さまです。」と深々と頭を下げられました。他にも、私は職人の一人だからとかのようなそれに類したことをおっしゃいましたが、何せ突然でびっくりしたもので、お恥ずかしいんですがよく覚えておりません。ガイドさんも一緒になって頑張りましょう!、とのエールの意味だったかと思いますが、ただ、やっぱり思っていたとおり本当に気さくな方で、また有田への思いに並々ならぬものをお持ちだったんだと、その時あらためて感じたものでした。 ここにご冥福をお祈り申し上げます。
なお、本日20日より、柿右衛門展示場と古陶磁資料館は営業を再開されています。
