令和五年度企画展 『 十三代今右衛門展 』 ~その人となりを求めて~
現在、今右衛門古陶磁美術館では、一昨年、昨年に続き、『十三代今右衛門展』~その人となりを求めて~ が開催されています。
ご逝去より20年の節目にあたる令和三年よりの連続の企画で、今展では、氏の創作の源となった人間性や内なる美意識に影響を与えた五つの分野にスポットをあて、十三代の人となりを感じられる最終の展示となっていて、私も先日展示を観て来ました。
残された幾つかの言葉の中に、印象深いものがあります。一つだけご紹介します。
”出来上がった作品が放つ美しさには、その人が若い時に体験した背筋に氷が走るような感動が裏に隠されています。・・感動の数々が美意識を培い作品ににじみ出てくる” とおっしゃっていたとのことでした。
また、若い頃よりクラシックに親しみ、音楽の演奏と色絵磁器の創作は共通した芸術の世界であるとも捉えられていたようです。
昨年の二期目の展示の時も記しましたが、晩年の十三代の作品には、現世を突き抜けた十三代独特の不思議な世界を感じておりましたが、今回の展示で、氏が更紗をこよなく好まれ、そこから現世にない “珠樹文” の中に今右衛門の世界だけに存在する吉祥文として、エキゾチックな空想的な独自の意匠を見出され到達されてたことが分かりました。なるほどそういう事だったのかと、今回の展示で新たに作品の魅力の一端に触れたような気も致しました。とはいいながら、十三代の最晩年の言葉で紹介されてますように、・・頭のなかでは何かが出来上がっている、・・あともう少し・・、と最後まで氏の世界を追求されてたことも分かり、ただただ頭が下がる思いも致しました。
たまたまお人柄が偲ばれる様子を拝見したことがありました。あれは今右衛門古陶磁美術館が開館して間もないことじゃなかったかと思いますが、展示品の中に江戸期のご婦人が猫を膝にのせてくつろいでるような、古伊万里の人形の磁器をおそらく初めて展示されてたことがありました。(今思えば、歴史民族資料館発行「おんなの有田皿山さんぽ史」の表紙を飾る、「色絵猫抱き人形」だったかもと思います。)。それを前にして、氏のおそらく親しい方だったように思いましたが、「今回こんなものを展示しました」と、ちょっとはにかみながらその方におっしゃってた場面に居合わせたんですが、「よろしんじゃないでしょうか」と応じる相手の方とのやり取りなんかも目にし、何だか微笑ましい感じを受けたのを思い出します。
微笑ましい感じといえば、ある年の陶器市。今右衛門窯の前をたくさんの人が行き来していましたが、その内に、ちょうど今右衛門窯の前の角で、「さぁさぁ、買った買った、お安くしてるよ~!!」と、声が聞こえます。気になって振り向きますと、他の業者さんの若いお兄さんが威勢よく声を出してました。
フト反対側を見ますと、ニコニコと十三代がその様子を楽しそうに見守っておられました。身近に感じた氏のお人柄でした。
令和三、四、五年にわたる 『十三代今右衛門展』の締めくくりとして、作品はもとより、氏の人間性、美意識の原点を知る良い展示だと感じました。町民の方はもとより、多くの方がご覧になられて、十三代の世界に触れられてはいかがかナと思います。
(12月17日(日)迄。月曜休館。 )
[画像はチラシより掲載させて頂きました。]
(山)