この秋から年末にかけては、古唐津が熱い。
その醍醐味はやはり絵唐津であろうか。
10月から11月にかけ、唐津市近代図書館では『唐津のなかの唐津焼展』が開催された。
唐津焼の誕生は、唐津市北波多の岸岳城下で上松浦党の領主である波多氏の庇護により始まったとされている。
その展示は、そこから始まる唐津焼の歴史を、誕生から近代に至るまでの変遷を辿っていてなかなか興味深いものだった。
中でも、私は絵唐津の文様の多彩さに圧倒された。撮影可であったので幾つか写真に撮ったが、特に残されていた
陶片のその素朴なデザインに大いに興味をそそられた。次のような、命という文字。なぜその文字が残されているのかなど、
色々思案し、興味は尽きなかった。
今、ここ有田では、九州陶磁文化館において、新収蔵品展2 『古唐津とその周辺』展が開催されている。
古陶磁蒐集家である、山口陽二氏が蒐集された古唐津を中心に、初期伊万里、上野焼、現川焼等を含めた作品展である。
非常に驚いたのは、蒐集された作品のその質の良さである。さらに驚いたのは、わずか約15年位でそれらを蒐集なさって
いたことである。展示作品冊子にあるように、価値ある文化財を後世に残したいという強い思いがおありだったことがよく分かり、
作品そのものと共に、非常な感動を抱いたところであった。
卑近に戻れば、何といっても古唐津の素朴さ、そののびやかな文様の素晴らしさは何とも云えない。
草花文の魅力もさることながら、残された文字もまた愉快でもある。学芸員さんの説明を聞くまでは、
実は一度目の鑑賞時は完全に見落としていたのが次の文字が記された茶碗作品である。
体を左に倒さないと分からないものであった。
(展示内、撮影可だったが、りっぱな冊子が作成されてたのでその必要性はなさそうだ。)
次の文字の小鉢も、素朴さの魅力が何とも云えないが、そもそも、どういう理由から、「やきもの」や「風」の文字を記すに至ったのか、考えれば考えるほど興味は尽きない。出光美術館の出光佐三氏愛蔵の「絵唐津 丸十文茶碗」等を思い出したりもするが、そのとき心は既に桃山・江戸初期に飛んでいるのである(九州陶磁文化館にて、令和6年1月8日迄展示中。)
(山)